「オレ様は処女には手ぇ出さねぇ主義なんだよ」
アランはベッドに座り込んで葉巻を燻らせながら、まるで値踏みでもするように目の前のの全身を上から下へと眺めた。
「処女に見える?」
は物怖じとは何かと言わんばかりにアランに尋ねる。
ほんの少し小首を傾げ、瞳を細めるその立ち姿は、まるで男を誘う女の格好だ。
「そうじゃねぇとでも言うのかよ? 17程度の小娘が」
くくっと喉を震わせ、アランは葉巻を銜えなおす。
するとが歩み寄り、すっと彼の唇から葉巻を取り上げると、アランの首に左腕を回しながら、ベッドのサイドボードに据え付けてあった灰皿に葉巻を押し付けて火を消し去る。
ギシリと、分の体重を受け止めたベッドのスプリングが軋んだ。
「今時の17歳を知らなすぎるんじゃない? オジサマ♪」
はベッドに体重を乗せている右足の膝を、アランの足の間に深く割り込ませる。
そして額が付くほどに顔を近づけて、アランの葉巻の香りがする唇にふっと息を吹きかけた。
「……知ってみろってか」
アランはちっと舌打ちをした。
のような自分の半分にも満たない年齢の少女に主導権を握られているのがよっぽど不本意なのだろう。
自分の首に回された彼女の腕を掴むと、アランはそれを横側に引いた。
の体はその勢いのままにベッドに引き倒される。
「上等だ、後悔すんじゃねぇぞ」
ベッドに横倒しになったを脇から抱えるように右腕で支え、アランは彼女の顎をくいっと左手の親指で持ち上げた。
そしての細い体にゆっくりと圧し掛かるように覆いかぶさると、自然と彼女は瞼を閉じる。
アランはそれを暗黙の了解と受け取り、の体を抱えていた右腕で胸を掴むように持ち上げて、口を近付けた。
だが。
「………っ」
僅かにの唇から吐息が零れた。
アランはゆっくりと目を見開くと、呆れたように微かな嘆息を漏らす。
彼女は小さく震えていた。
「……ったく」
まったく馬鹿馬鹿しい、とアランは小さく舌打ちをした。
「そうまでして俺がいいのかよ……っ」
経験が有るような素振りを見せて初めての恐怖を押し殺してまで、自分と関係を持ちたいのか。
アランは自分のそんな小さな独り言など聞こえもしていない、頬を染めながらキスを待つを見下ろして眉を顰めた。
「」
初めて呼ぶ彼女の名前。
呼ばれたが、何時までたっても感じないキスの感覚に不安を覚えて悲壮の表情を浮かべたまま、瞼を押し上げる。
アランはそんな彼女の顔を見た瞬間、ぷっと吹き出した。
「な、なによ…!」
アランの事情が飲み込めないがムキになって食って掛かったが、そんな彼女もアランと目を合わせた瞬間、思わず押し黙った。
みるみるうちに彼女の目許が赤く染まっていく。
そして震える声で、アランに訴えた。
「…そんな優しい目、して……ずるい…」
アランはくくっと喉の奥で笑うと、の前髪に無骨な男の指を差し入れて後ろへと梳き、そして彼女の頭をやわらかく撫でた。
何度も何度も宥めるように。
そしての震えが感じなくなった頃ゆっくり彼女に瞳を閉じるように促し、自分もその唇を彼女のものへと近づける。
その時、の自分の服を掴む手を包むように握り―――――。
「こういう事は…、オトナに任せときゃいいんだよ……」
普段のアランからは考えも及ばないような、甘くて優しいキスをの唇に落とした。
〜END〜